※このブログは BlogKit(KJ Works)の見本です。写真と画像は AI で作ったものです。

おでかけ

雪の日、マチと歩いた

朝、カーテンを開けたら世界が白かった。

予報では「うっすら」と言っていたのに、庭も屋根も塀の上も、ぜんぶ雪。こうなると、うちの犬が黙っているわけがない。

マチはもう玄関の前で待っていた。前脚を揃えて、しっぽだけが猛烈に動いている。「行くよ」と言う前から答えが出ている顔だった。

雪の中を、寺まで

リードをつけて外に出た瞬間、マチが鼻から雪に突っ込んだ。そのまま顔を上げると、鼻の頭に白い塊がのっている。笑ってしまって、写真を撮るのを忘れた。

いつもの散歩道を少し延ばして、坂の上のお寺まで足を伸ばすことにした。石段は滑るので、僕は一段ずつ。マチは平気な顔で先に行っては、振り返って僕を待っている。

登りきって、僕は思わず声が出た。

舞台から。雪で音まで消えていた
舞台から。雪で音まで消えていた

舞台に着いた時刻

09:40

舞台の向こうに、白くけぶった街が広がっていた。

何度も来ている場所なのに、まるで知らない景色だった。屋根の黒と雪の白しかない。遠くのビルは輪郭だけになって、山との境目がわからない。

雪の日は音が吸われる、というのは本当だった。人の声も、街の音も、全部どこかへ行ってしまって、自分の呼吸だけがやけに大きく聞こえる。

しばらく、二人とも黙って見ていた。マチも座って、同じほうを向いていた。

たぶん犬は景色なんて見ていない。でも、そう思いたくなるくらい静かに座っていた。


帰り道の、三人

坂を下りて住宅街に入ったところで、マチが急に立ち止まった。

視線の先、ブロック塀の上に——

大・中・小。並び順まで完璧だった
大・中・小。並び順まで完璧だった

雪だるまが三つ、並んでいた。

大きいのと、中くらいのと、小さいの。枝の腕の角度まで丁寧で、真ん中の子だけ鼻が赤い。誰かの家族が、今朝ここで一生懸命作ったんだろう。

顔がぜんぶ少しずつ違うのがよかった。大きいのは真一文字の口で、小さいのはなんだか嬉しそうに見える。

マチはしばらく匂いを嗅いでいたけれど、雪だとわかると興味をなくして、僕を見上げた。「行かないの?」という顔だった。行くよ。

作った人の顔は知らないけれど、たぶん手はかなり冷たかったと思う。それでも三つ作ったんだから、よほど楽しかったんだろう。

公園で、マチが跳ねた

近所の公園まで来ると、雪はまだ誰にも踏まれていなかった。

リードを外していい場所ではないけれど、長さいっぱいまで伸ばしてやると、マチは待ってましたとばかりに走り出した。

白い犬が白い雪の上を走ると、どこまでが犬かわからない
白い犬が白い雪の上を走ると、どこまでが犬かわからない

雪を蹴り上げて、耳を後ろに倒して、口を開けて。ふだんの散歩では絶対に見せない、全力の顔だった。

白い犬が白い雪の中で跳ねているので、正直どこまでが犬なのかわからない。それでも、こちらに向かって走ってくるときの嬉しそうな顔だけははっきり見えた。

この日いちばん嬉しかったのは、たぶんこの時間だ。

  • 雪の玉を投げると、鼻でキャッチしようとして失敗する
  • 自分でつけた足跡を、もう一度たどって走る
  • 呼ぶと全速力で来るのに、手前で急に方向を変える

これの何がそんなに楽しいのか、僕にはさっぱりわからない。まあ、わからなくていいか。


晴れて、溶けはじめて

十分に走らせて、そろそろ帰ろうかというころ、急に空が明るくなった。

雲が切れて、日が差してきたのだ。

帰り道。足跡だけが残っていた
帰り道。足跡だけが残っていた

道の雪はもう溶けはじめていて、水になった路面が夕日を反射して、一面が金色になっていた。

その上に、点々と足跡が続いている。僕とマチが今朝つけたものか、それとも誰か別の人のものか。どちらでもいい気がした。

朝はあんなに白かったのに、夕方にはもう溶けている。せっかちだなと思うけれど、すぐ溶けるとわかっているからこそ、今朝あんなに慌てて外に出たわけで。

家に着くころには、マチの足はびしょ濡れで、タオルで拭くのにずいぶん時間がかかった。それでも本人は満足そうに寝転がって、すぐ寝てしまった。

景色に見とれて、雪だるまに和んで、犬が跳ねるのを見て、金色の道を帰ってきた。

一日でこれだけ詰まっていたら、もう十分だ。

明日にはきっと、全部溶けてなくなっている。だから書いておく。